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[ 2017年05月26日 - 13:05 ]

【呂比須新監督の''フライパン革命''】



呂比須新監督の“フライパン革命”。
新潟を4日間で変えた異例の手法。



5月20日、デンカビッグスワンスタジアムのピッチでは、アルビレックス新潟・呂比須ワグナー新監督の初戦、北海道コンサドーレ札幌戦のキックオフの瞬間が刻々と近づいていた。

 この日、スタメンから外れたチーム最年長で副キャプテンの本間勲は、ロッカールームから歩いてベンチへ向かっていた。すると、ベンチのほうからスタッフに呼ばれた。

「早く来い! 肩を組むぞ!」

 慌てて駆け寄りながら、自分の後ろからベンチへと向かっている他のメンバーを大きな声で呼ぶ。

「早く、みんなで肩を組むぞ!」

 本間が肩を組んだ右隣はメディカルの山本和恒トレーナー、左は控えGK守田達弥だった。目の前のピッチでは、仲間たちが自分のポジションへと散らばっていく。そして山本雄大レフェリーが試合開始を告げるホイッスルを吹いた瞬間、呂比須監督の咆哮を皮切りに、肩を組む全員が雄叫びを挙げた。

 自分も周りも、何を叫んでいるのか分からない。けれどもとにかく腹の底から声を出した。ベンチ前で控え選手と監督、スタッフ全員で肩を組む。PK戦ならともかく、今から試合が始まるというときだ。

「そんな経験、初めてですよ。肩を組んだからか分からないけれど、いつもよりはるかに試合に入れ込んでいましたね」




「感じたことがないくらい、一緒に戦っている感覚」


勝ち切るためにせよ、反撃するためにせよ、ボランチとしてピッチに投入される本間に課せられるタスクは重大だ。チームが混乱しているのであれば秩序を回復し、疲弊が見られるのであればパスを循環させて、息を吹き返させなければならない。

「いつもは、できるだけ冷静に試合展開を見極めるようにしているんです。自分まで興奮しちゃうと、いざピッチに入ってもいい仕事はできないですからね。でも札幌戦は違った。入れ込み過ぎるわけではなく、冷静な自分もいるんだけど、これまで感じたことがないくらい、ピッチの中の選手たちと一緒に戦っている感覚になったんですよ」





就任会見からたった5日で迎えた初戦。

 試合開始前だけではなかった。後半が始まる前にも、ベンチの前でみんなが肩を組んだ。そして66分、狙いのひとつだった相手CKからの鮮やかなカウンターでホニがゴールを挙げ、1−0で勝利。チームの連敗を4で止めた勝利は、リーグ戦では実に昨年8月20日以来、9カ月ぶりのビッグスワンでの白星だった。

 リーグ第11節を終えてわずか1勝だったチームは、今シーズンから就任したばかりの三浦文丈監督が辞任。片渕浩一郎コーチが暫定的に指揮を執った前節の浦和レッズ戦は、ビッグスワンで1−6と惨敗。ついに最下位に転落した。

 この窮地から脱するべく、チームは呂比須監督の招へいを決めた。就任の記者会見から初陣までは、わずかに5日。4日間のトレーニングで新指揮官が打ち出したコンセプトとテーマは、堅守と速攻を取り戻すことだった。

 呂比須監督が「新潟のDNAだと思う」という堅守速攻をチーム作りの基盤に置いたのは、三浦前監督も同じである。





「まず、ハイプレスをみんなでやりましょう!」

 札幌戦までのごく限られた時間でコンセプトを形にするために、まずシステムが変わった。あいさつ、質疑応答を含めてすべて日本語で通した就任会見の翌日。最初のトレーニングの冒頭でブラジル出身監督は、やはり日本語の大きな声で、選手たちに語り掛けた。

「4-2-3-1をやります。自分の好きなポジションに入ってください」

 トレーニングピッチの自陣に、1トップから中盤、4バック、GKまで、選手全員が散らばっていく。敵陣にはペナルティーエリアの高さに左右、中央と3つのボールが置かれている。さらに敵陣中央あたりに同じく左右、中央、そしてハーフウェーライン手前にも左右と中央にボールが1つずつ。選手がポジションを取り終えると、呂比須監督は一番奥、中央のボールを指し示した。

「まず、ハイプレスをみんなでやりましょう。あのボールにプレッシャーを掛けてください!」

 一瞬戸惑った選手たちだったが、全員がゾロゾロとボールに向かって動き出す。そこに、すかさず監督の声が飛ぶ。

「走らなくていいよ、でも歩くんじゃなくてジョギングでね。それから黙ってじゃなく、しっかりコーチングの声を出しながらやろう!」




「すばらしい! みんな拍手してください!」

 ハイプレスのための真ん中のボールから、左、右。2列目、つまり呂比須監督の言葉を借りればミディアムプレスの中、左、右、そしてロープレスの中、左、右。チームが一塊となって動く。トップから最終ラインまでは、35mのコンパクトさを保つことが求められた。

 続いて守備のときは4-2-3-1のトップ下が1列上がって4-4-2に、攻撃のときはボランチの1人がセンターバックの間に落ち、両サイドバックが上がる3-4-3の動きを確認する。3-4-3で実際にボールを動かしながらシュートまで行い、ゴールが決まれば「すばらしい! みんな拍手してください!」と手放しで褒める新監督。

 促されるままに、選手たちもみな拍手。「正直、拍子抜けしたというか(笑)」とは、あるベテラン選手の言葉だ。

「その2日前に、呂比須監督もあれだけレッズにボロボロにやられる姿を視察していたわけで。この状況を立て直すには、よほど危機感を持って、厳しくやっていかないとだめだろうと思っていたら、終わりの方に『あと3時間で終わりまーす』とか、冗談も交えながらの練習だったので(笑)」




前からボールを取りに行かない、という宣言。

 ただ和やかなだけではない。練習2日目、選手たちにきっぱり伝えた。

「オフサイドトラップはやりません。ボールを前から取りに行くこともしない」

 選手たちは戸惑った。前日、狭い局面で激しい1対1が自然に生まれるようなメニューが組まれ、選手たちも“久しぶりに新潟らしい、バチバチしたトレーニングができた”と充実感を味わった矢先のことである。アグレッシブにボールを奪いに行くのが自分たちの持ち味ではないのか。

「ボールを取りに行かないなんて。このサッカーをやるんだったら、俺はまったく必要ないです」

 開幕から試合に出続ける主力選手の1人は、戸惑いを通り越して、明らかに不満そうだった。





中途半端に取りに行ってのカウンターにまず対処。

 だが、別の主力選手が「トレーニングでハイプレス、ミディアムプレスも確認している。いろいろやる中で、今の自分たちのやり方はこうだ、というのを監督ははっきり示してくれている」と話すように、呂比須監督のサッカーは決して型にはまった、硬直したものではない。

 今、最優先で改善しなければならないのが、中途半端にボールを取りに行って奪い切れず、そこからカウンターを受けて重ねる失点。それが、大分トリニータやFC東京でCBとしてプレーし、'13年から指導者としてタッグを組むサンドロ・ヘッドコーチと、今シーズンの新潟の試合をすべて見直して分析した結果、たどり着いた第一の処方箋であった。

「チーム状況が安定して、順位も上がってきたら、積極的に前からボールを取りに行ってもいい。でも今の自分たちは、まずしっかり守備して、そこから速い選手を生かすサッカーをしないといけない」




CKでの前線の人数を厳守し、ゴールが生まれた。

 呂比須監督のディティールへのこだわりが、札幌戦で最も顕著に表れたのが、66分の決勝ゴールの場面だ。相手CK時の守備方法についても、1つの変更が施された。札幌戦では守備の枚数を1枚削り、カウンターのために前に2人残すことになっていた。

 ところが決勝ゴールが決まる1つ前の札幌のCKのとき、ホニとともに前線に残るべき森俊介がゴール前の守りを固めるために呼び戻された。呂比須監督はテクニカルエリアを飛び出さんばかりの勢いで森をいるべきポジションに付かせようと指示を出したが、このときは伝わり切らずにプレーは進んだ。

 そして66分の右CKの場面。やはりゴール前に戻りかけた森だったが、呂比須監督の指示に気づいて前線に残った。

 果たして新潟はCKから危険なシュートを浴びるが、ロメロ・フランクが体を張ってブロック。そのこぼれ球を森が富澤清太郎につなぎ、富澤のスルーパスからホニが決勝ゴールを突き刺した。




ミーティングルームから響くフライパンの音。

 札幌戦の翌日、トレーニングはミーティングから始まった。ほどなくして、クラブハウス2階のミーティングルームから、1階でメディアが待機している部屋にまで、割れんばかりの拍手と歓声が聞こえてくる。それも、何度も何度も。

 そのうち打楽器を叩くような音も混ざってきた。

 札幌戦を映像で振り返るというのが、ミーティングの内容だった。

「良かったシーン、もっと頑張ろうというシーンを見ましょう。良いシーンは、みんなで拍手しましょう」

 呂比須監督の呼びかけに、誰かが持ち込んだフライパンもカンカンと打ち鳴らされた。

 誰もが待っていた勝利の翌日。日曜日とあって、いつも以上にたくさんのサポーターがトレーニングを見学に訪れていた。その中には前日、ビッグスワンに入るチームバスを出迎えた2000人のうちの1人だったサポーターもいたはずだ。あのとき、チャントを歌いながらチームを後押しするサポーターを目の当たりにして、バスに乗っていた呂比須監督は選手たちに語り掛けた。

「音楽を聴くためにヘッドフォンをしている人は、外してください。そしてサポーターの歌を聞いて、彼らと目を合わせてください」



チームを動かすエネルギーは、リスペクトの心。

 大騒ぎのミーティングが終わって、選手やスタッフがトレーニングピッチに姿を現した。最後に呂比須監督が登場すると、見学するサポーターから大きな拍手が沸き上がった。

 札幌に勝利したチームは、最下位から順位を1つ上げた。シーズンはまだ3分の2を残し、劇的に状況が好転したわけでもない。進むべき道の険しさは、選手、スタッフ、サポーターの誰もが理解している。

 それでも、決して大げさではなく、地球の裏側からやって来たブラジルと日本の国籍を持つ新監督は、新潟のサッカー文化を変えつつあるように思われる。

 今、チームのエンジンを動かすエネルギーは、リスペクトの心だ。

http://number.bunshun.jp/articles/-/828138



呂比須監督って、こんな情熱系の熱い監督だったとは・・・!



ガンバ時代は実質監督の立場で、でもセホーンが本当の監督。

そんな二頭体制でうまく機能しなかっただけで、実はクラブがしっかりしていれば、名将なんじゃないのか!?



スレッド作成者: 文字化け厳禁 (gteCJq.UUuE / zLD.CLdkhwo)

このトピックへのコメント:
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(05/27 - 20:41) 相変わらずすぐ結論付けたがる人がいるな。名将なんて何年も結果出してやっとだろ。
(05/27 - 10:41) 札幌戦は負けてもおかしくないくらい内容なかったからまだ分からんな
(05/27 - 07:02) 地味 無修正動画
(05/27 - 06:34) 呂比須ヴァグネル
(05/26 - 20:55) 選手が限界まで能力を発揮してやっと戦えるチームだから戦術なんかよりよっぽど重要
(05/26 - 18:57) 典型的なモチベータータイプだな。選手時代からその片鱗はあったな
(05/26 - 16:42) モチベータータイプは日本じゃ貴重だよ。屁理屈ばっかで試合中腕組んでじっと試合見つめる監督はあまり好きじゃない
(05/26 - 15:25) ヘッドフォンの一件でとりあえずサポーターは掴んだ感がある
(05/26 - 15:07) メンタル面に関してロペスは名将だな
(05/26 - 14:17) クラブがしっかりしてるwww新潟がwww
1317 (05/26 - 14:08) 他サポですがこれは結構ジーンと来ますね。
(05/26 - 14:03) 復調したかわからんだろw
(05/26 - 14:01) 就任会見だったかで、ただ静かにビデオを見るのは駄目、鳴り物を使うのもあり、みたいなことは言ってた気がする
(05/26 - 13:37) フライパンは呂比須が持ち込んだものじゃないんだなw
(05/26 - 13:20) チームの復調はメンタルからというのが良くわかる話
(05/26 - 13:17) ヘッドフォンを外す話はマジで凄いなと思いました。稀代のモチベーターですわ。
(05/26 - 13:15) 現実をみた戦術眼と、子供騙しかもしれないがモチベーターとしての力も感じる記事
(05/26 - 13:08) 呂比須に不満な主力選手、出て来なさい