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[ 2017年11月21日 - 16:15 ]

【宇佐美貴史の苦悩】

■ 2度目のブンデス、2部レンタル……。宇佐美貴史が今、考えていること。

もがいていた。

 「クリアにしていきたいですね、もっと頭を」

 凍てつく寒さが瞬時に沸騰したシーソーゲームに、参戦できなかった宇佐美貴史。胸の奥から言葉を吐き出した。

 2017年2月、枯れ木のシルエットが冬の大地を覆い尽くしていた頃――。

 2月5日、ベルダー・ブレーメンを迎え撃ったFCアウクスブルクは、守備を免除された敵の2トップ=マックス・クルーゼとセルジュ・ニャブリに手を焼きながら、ようやく3-2で勝ち切った。

 勝ち星を手繰り寄せたのは、後半のアディショナルタイムのこと。エースFWラウル・ボバディーヤの一撃に、WWKアレナは、我を忘れて歓喜に酔いしれた。

 熱に浮かれたゲームの傍で、背番号39はピッチの脇で体を温め、向こう側を眺めるだけだった。マヌエル・バウム監督から声が掛かる気配はない。

 出番は、最後まで訪れなかった。

2度目のブンデス挑戦も、ずっと不遇だった宇佐美。

 翌日、勝利の余韻が残る練習場――。

 サブ組でトレーニングを終えた宇佐美は、「原点」を強調した。

 「昨日、頭の中をクリアにするって言ったのは、もう本当に原点に立ち返る、一回。いろんなやることも多いですけど、それ考えるのも大事ですけど、一回、原点に帰るところじゃないか、みたいな意味で言ったんです」

 '16年の夏、2度目のブンデスリーガに挑んでいた宇佐美だったが、半年を経てなお、ポジションを確保できていなかった。

守備的な要素があまりにも多すぎて、仕掛けられない。

 その頃の宇佐美は、守備に偏重するアウクスブルクのサッカーの中で、なかなか「強み」を発揮できないままでいた。

 「守備のタスクが大きいのと、守備に決まりごとがすごく多いので、それを上手くこなしながら、かつ、やっぱり回される相手の方が多いので……。

 どうしても比重はすごい後ろに乗っかっている状態の中で、ボールを奪っても前に1人、2人しかいないので。そういうチームの在り方があるのはもう百も承知なんですけど……頭の中をクリアにする、もうだから、純粋に俺の強みはどこなんだっていうところを、もう一回こう、再確認して、仕掛けていかないと。

 うん、やっぱり自分の良さは出ないかなあと思うので。そういう数的不利でも、もう行ってみるとか、仕掛けてみるとか、そしたら、何か起こるかもしれないですし」


「ガンバでやっていたようなプレーはできない」

 宇佐美は「ガンバでやっていたようなプレーをここではできないと思います」と言う。

 決して諦めたわけではない。ガンバ大阪で数多のファンを魅了したプレースタイルを放棄したわけでもない。

 監督が志向するスタイル、チームメイト、与えられるポジション……Jリーグでパトリックとコンビを組んで3冠を達成し、アシストとゴールを量産した頃と今は、何もかもが違っていた。

 眼前の戦場はブンデスリーガ。

 降格を免れようとするアウクスブルクで求められるのは、第一に堅い守備。攻撃は二の次だった。

「自分のプレースタイルを、少し忘れかけて……」

 「もう少しこう回せるチームであれば、良さは出しやすいとは思いますけど、でも、そうではないので。現実をしっかり見ながら、そういう現実がありながらも、やっぱりしっかり『理想』は掲げたいですし、その『理想』をより強く頭でイメージして、サッカーをすることが大事かなあと思いました」

 ――「理想」とは? 

 「まあ、したいプレーですね。だから、仕掛けたい、シュートまで持っていきたい、いいパス出したい、とか。守備に追われる分、そういうプレーのイメージを描きにくいと思うんですけど、それをしっかりと頭の中でこう、描きながら、守備のタスクをこなしていく、っていうところかなあと思いますね。

 やっぱり自分自身のプレースタイルとかっていうのも、少し忘れかけている部分はあると思うし、まあ、試合に絡めるようになってきた中での悩みなんですけどね。やっぱり、理想を頭でイメージすることっていうのはすごい大事だと思うんで、どんなときも」

 「どんなときも」。丸いボールと同じで、「現実」はどこへ転がるか分からない。その先に冷たい世界が目の前に広がったとしても、揺るぎなき「理想」を掲げる。それが大切なことだと、宇佐美は話す。

攻撃的サッカーのはずが……守備的に変化?

 「前々監督の(マルクス・)バインツィアルは、ヨーロッパリーグにも行ったりしていましたし、攻撃的でボールを動かすようなサッカーをしているっていうのは聞いていました。で(日本からドイツに)行ったら、監督が変わってて、さっき話したようなサッカーになっていて、そのサッカーの尾を引きずっているような状況ですけど」

 日本を発つ前に情報を仕入れていたが、ドイツに降り立つと様子が違っていた、ということだ。

 バインツィアルはシャルケ04に引き抜かれ、代わりにディルク・シュスターが監督に就任。前季SVダルムシュタット98を残留に導いたばかりのサッカーは、ロングボールが主体で創造性を必要としないスタイル。欲しがられるのは、宇佐美のようなアタッカーではなかった。


シェスター解任。残留争いでさらに守備重視の戦術に。

 得点力不足に喘いだチームは下位に低迷。その年の12月、成績不振により今度はシュスターが監督解任となった。

 新たにバウムが指揮を執ることになったが、残留を目指す守備重視の戦術に変わりはなかった。 
 吹き続ける逆風。

 年明けには先発の機会も数回あったが、アウクスブルクのサッカーの中で、終ぞ宇佐美が居場所を確保することはできなかった。

 春、4月のヘルタ・ベルリン戦、1.FCケルン戦、アイントラハト・フランクフルト戦に出場したのを最後に、試合はおろか、ベンチからも遠ざかった。

秋になって……宇佐美はデュッセルドルフにいた。

 月日は巡る。

 カラリと晴れ渡る欧州の夏も過ぎ去り、街路の木々も枯れ始め、空は灰色の雲で厚く覆われていく。秋の冷たい雨が、路面をしっとりと濡らした。

 舞台はかわり、ブンデスリーガ2部。

 初夏のプレシーズンを通してアウクスブルクでバウム監督の構想に入ることができなかった宇佐美は、ブンデスリーガ2部のフォルトナ・デュッセルドルフへのレンタル移籍を決断する。

 すると直ぐに結果を出した。

 デビュー戦となった9月10日のウニオン・ベルリン戦で、鮮烈なインパクトを残す。

 相手のクリアが不十分だったボールを、右足ダイレクトで一閃。

 移籍して初先発を飾った9月23日のFCザンクトパウリ戦でも、目の前に転々ところがってきたボールを、ダイレクトでゴールに突き刺した。その才の片鱗を見せ付けて、捲土重来を期す宇佐美。

 しかし、その後が続かなかった。

 10月に入ると、MSVデュイスブルク戦、アルミニア・ビーレフェルト戦と2試合連続で途中出場。SVダルムシュタット98戦では先発出場し、コーナーキックを蹴って先制点を演出したが、無得点で80分に交代。30日のボーフム戦では見せ場を作れず、61分と後半の早い段階でピッチを退いた。

 試合後に宇佐美は「消化不良」と落胆の色を滲ませた。

 得点感覚については「今のところ、研ぎ澄まされてはいるかなとは思います」と語っている。それはウニオン戦とパウリ戦で証明済みだ。コンディションが良くなっているという感覚もある。だが、フリートヘルム・フンケル監督からの信頼を掴み切れない。


昨年より良いが……定位置を確保し切れてはいない。

 ボーフム戦を終えて、かつて高原直泰、稲本潤一、乾貴士、大迫勇也といった日本人選手たちを指導した“伯楽”フンケル監督から、宇佐美に「要求」があったという。11月5日に行われた1.FCハイデンハイム戦の「前々日くらい」のことだ。

 背番号33は自身のコンディションの状態などを伝え、「ポジティブな話ができた」。しかし、「要求」された直後のハイデンハイム戦で、出番は訪れなかった。

 後半のアディショナルタイムから唐突に加速したシーソーゲームに、宇佐美は参戦できなかった。

 昨季に比べれば、少しずつ状況は改善しているかもしれない。既に2ゴールを決め、毎試合のように試合に出場してきた。だが、定位置を確保し切れてはいない。「現実」を前に、依然としてもがいているようでもある。半年以上前にアウクスブルクの練習場で語った「理想」を、宇佐美は、心の中に今も掲げているのだろうか。

「相手の状況に合わせてサッカーをしないと……」

 この11月の代表ウィーク、デュッセルドルフの練習場――。

 程近い空港からひっきりなしに離陸する飛行機の轟音が、灰色の空を引き裂いている。

 宇佐美は「(理想は)変わらずです」と言い切った。

 「僕がイメージしている理想と、サッカーをしている人で、僕のことを、僕のプレーを見ている人は、たぶん、その理想は同じ感じだと思う」

 かつてそのプレーに魅せられた者であれば、誰もが抱く期待=「僕がイメージしている理想」。変わらず心の中に抱いていた。

 「(理想は)もちろん掲げている、掲げるっていう意味ではボールコンタクトが多く、チーム全体として多くて、自分にもボールがよく入ってくる、だから1回のボールコンタクトにこう、固執しないでいいくらいボールがポンポン入ってくるっていうサッカーの中に、自分の身を置けるっていうのが理想ですけど」

 厚い雲を掻き分ける飛行機の轟音が響き渡る。

 宇佐美の声に芯が通る。

 「でも、それを常に掲げられて、それが常にプレーできるチームっていうと、本当に世界のトップ・オブ・ザ・トップというか、それぐらいの強豪チームしかない。どんな相手にもまず自分たちがボールを保持できるようなバイエルン、バルサとか、そういうチームにいるわけじゃないし、相手の状況に合わせてサッカーをしないといけないので。

 誰でも理想はそういうサッカーがしたいと思いますけど、現実的に、しないといけないプレーとか、守らないといけないタスクはあるので」


フォルトゥナは「バイエルン」ではない。

 「理想」と「現実」の擦り合わせ――アウクスブルクでは、その隔たりは果てしなかった。

 「去年のアウクスブルクに関しては攻撃的な部分は、ほぼほぼ皆無でしたし、ボールが入ってきても、もう全員が疲れている状態、ほぼほぼエネルギーが残っていない状態だったんで、まあ、ここではそんな感じではないですし、はい」

 「ここ」=フォルトナ・デュッセルドルフは、2部で首位を走るチームだ。

 ホームのエスプリ・アレナでは、昇格に飢える観衆の情熱に乗せられて、時に不器用にでもボールを回していく。

 もちろんフォルトナは「バイエルン」ではない。

 フロリアン・ノイハウス、マルセル・ソボトカ、ベニト・ラマンといった20代前半の野心溢れる選手たちが躍動しているが、若さ故の脆さもある。対戦相手を常に圧倒できるわけではない。それでもアウクスブルクに比べれば、宇佐美にとって「強み」を発揮しやすい環境だ。

 フンケル監督からの「要求」とは、どちらかと言えば、守備に関するものではなかったという。

 「攻撃的な要求のところが多かった。今見せているプレーと、もう少しのところ。攻撃的なところで、具体的にっていう」

 指揮官は宇佐美の「強み」を必要としている。

 可能性は残されているのだ。

あくまでも……「理想」の旗を降ろすことはない!

 ――最後に。サッカー選手は「理想」と「現実」のバランスを、どのように取ったらいいのだろう? 

 「もう僕だけじゃなくて全員が持っているものだと思いますし、したいプレーと要求されるプレーが違うジレンマとかっていうのは、誰しもあるところだと思うので、うーん……そうですね。まぁただ自分のプレースタイルにしても、サッカーのスタイルにしても、理想を掲げることを止めてしまうことは選手としてしちゃいけないこと、サッカー選手としてしちゃいけないことだと思いますし。

 なんとなーくチームのサッカーに合わせて、なんとなくのプレーで終わる、っていうよりはね。

 そういう部分は、やっぱリ忘れないようにしないと、自分が試合に出る意味はないと思う。それがいわゆる個性だと思うし、その個性をどれだけ、どんな状況であれ強く出すことができるかっていうことが、一番大事かなと思います」

 「理想」=サッカー選手であれば、掲げ続けなければならないもの。

 「理想」=サッカー選手を、ピッチの上で輝かせるもの。

 「理想」=宇佐美の心の中で、揺るがないもの。

 「現実」を直視する者であれば、その旗を降ろすことは、許されない。

(「欧州サッカーPRESS」本田千尋 = 文)

Number Web


https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171121-00829334-number-socc&p=5




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(11/23 - 12:33) 堕ちていく、3流の思考。言い訳ばかり考えてやがる。
(11/22 - 01:19) 下の奴ら凄いな。どんだけ偉いんだ?
(11/22 - 00:06) 単にスピード・技術不足なだけ、不細工で凡庸な選手に対してずいぶんと叙情的な書き物だことwwwちゃんちゃら可笑しいわ
(11/21 - 23:48) 実力的にブンデスの下位あたりだから守備できなきゃ使ってもらえないわな。かといって上位でスタメン争いできるほどじゃないし
(11/21 - 21:16) ガンバでやっていたようなプレー とか語ってるけど晩年はJですら通用してなかったけどな
(11/21 - 17:29) 典型的な下世代で王様してきたタイプ
(11/21 - 16:27) 結局宇佐美ってのはU-18くらいまでずっと王様やってたから、守備から攻撃、攻撃から守備への攻守の切り替えがすごく遅くて要求されたらそれしかできないんだよな。運動量とかよりもその攻守の切り替えのスピードと引き出しが乾よりも劣るレベル
(11/21 - 16:25) 乾もボーフムの時連携もないようなチームだったけど個人打開からなんどもチャンス作ってたぞ
(11/21 - 16:20) ボール持った時に仕掛けて交わすなり前に持ち運んで上がってくるまでタメ作らないとな守備のタスク多くても2部ならそれくらいやらんと1部では無理や